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SPECIAL INTERVIEW|桝友祐輔氏 / パティシエ・Esprit de Paris主宰

SAJIEの中でも、キーアイテムである匙(スプーン)のチョコレート。
食べるための道具であるスプーンが、食べられるチョコレートであるという象徴的な存在です。
このスプーンの造形を実現させるのは、パティシエの桝友祐輔氏による繊細な技術と特別な工程。SAJIEのリアルとファンタジーつなぐエピソードをご紹介します。

SAJIEの中でも、キーアイテムである匙(スプーン)のチョコレートは一つ一つ手作りされています。このチョコレートづくりを手がけるパティシエの、桝友祐輔氏にお話を伺いました。

SAJIEのチョコレートは、匙(スプーン)の形をしています。
食べるための道具であるスプーンが、食べられるチョコレートであるという象徴的なお菓子ですが、その作り方について教えてください。

チョコレートは作るとき、型に入れて冷やすと内側に収縮するんです。だからこういうスプーンの形は型から外れるときに、外れなくなってしまう。普通だったら型から外すときにパキッと折れると思います。これはスプーンの持ち手の部分とすくう部分をありえない形にしているので、通常を上回る強度でチョコレートが固まってくれて、かつ、いい形じゃないといけない。形を決めるデザイナーも、このチョコレートの型を作る人も、全員がそれを分かった上でやらないとできないんです。

SAJIEのチョコレートは技術的には外れるはずのない形をしているし、かつツヤがある。これを外そうと思ったら、本当は柔らかいシリコン型が確実なんです。でも今回はチョコレートが艶々になる型*でやるっていうオーダーだった。だから型取る時も、1回目を流して次を入れる時にどこかに偏った厚みがあるとそこが縮んでしまうので、なるべく縮まないように薄くしておいて、とかの工夫がいるんです。
註* SAJIEでは高精度の加工ができるアクリル製の型を使用しています

チョコレートの強度はどうやって高められたのですか?

通常、チョコレートはテンパリングという温度調整をします。チョコレートの6種類ある結晶のうちの1種類だけがきれいに固まる結晶で、それをかき集める技術のことをテンパリングと言って、今まではそれをしていましたが、実はチョコレートを真空機にかけて空気を抜くとそれよりもっと強度が増すんです。ボウルに入ったドロドロのチョコレートを真空機に入れると、空気が抜けて、湿気も一緒に蒸発してくれるんです。

真空の状態だと水は20度で沸騰するんですよ。どんなチョコレートでも、なかに1%の水分が入ってるというのを聞いていたんですが、チョコレートに水は一番要らないんです。要らないものなので、これをなくしたい。あとチョコレートはどんなに良い状態でも空気が入っていると思って、これも要らないよねと。真空状態にしたらどちらも抜けるんじゃないか、両方解決すると思ってチョコレートを真空機に入れてみたら…どこにも気泡が入らなかった。チョコレート自体に変なところがない、混じり気がなくて、つるっとなるんです。あと溶けにくくなりました。溶けにくくて、強度が増しました。

真空機に入るとチョコレートはどんな状態になるんでしょうか。

チョコレートがボコボコってします。その中だけ宇宙みたいになっているってことですから。一度に入れる量は少量で、それも実験しました。根源的に分かってないけどやる、みたいなのが全然できなくて、やりたくなくなっちゃうんで、ちゃんと蓄積された知識だったり経験がないと。

チョコレートに真空という新たな発見をされて、その経験を積まれたのですね。

チョコレート界のすごい人に「真空したことがあるか」っていう質問をしてもイエスって答えられたことがまだないので、たぶん史上初。探したらやってらっしゃる方がいるのかもしれないですけど、今のところ見つけられていません。
そもそも技術云々じゃなくて、チョコレートにとっても、いいことをしている。ただ感覚では、もしチョコレートにそれが作られた現地の空気が入っていたとしたら、それも抜けちゃうよね。あと元のカカオ豆の中の空気も全部抜けるんで、エクアドルのカカオ豆だとしたらエクアドルの空気も水分も抜けちゃうかもしれないですけど。感覚だからわかんないですよ、でも真空すると味がちょっと変わって、余計な雑味がなくなる。もともと持っているものがギュッて強化されるので、すごくいい発見をしたなと、自分では誇りに思っています。あと僕はこの真空についての話を、ほぼ、まだここでしかしていません。

続いては、SAJIEのチョコレートの味わいとその特徴についてはいかがでしょう。

チョコレートの中身は麻子さん*のレシピです。チョコレート自体は最も強度が保たれて作業性が高くて、かつ味が振れていない、中の味を邪魔しないという点からヴァローナ社のクレアシオン・ノアールの64%を選びました。他にも使いやすいチョコレートはいっぱいあるんだけど、これをやるにあたってはフレーバーを邪魔しない、送り出す技術が優先と思ったので、それに最も適しているものを選んで作りました。中身のフレーバーを最大限引き立てるためのチョコレートです。
註* PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGIのシェフパティシエール・岩柳麻子氏

SAJIEのチョコレートのフレーバーは6種あり、それぞれ違って個性的です。そんな中身を一つのチョコレートが内包するというのは桝友さんの考えですか?

本当は二つ使おうと思って、片方は酸味があったんですけど、これをやると麻子さんの味に足しちゃうよねって思って止めました。なので6種のチョコレート自体は変えてません。何も足されてないような、素直なチョコレートらしい味を選びました。もう、チョコレートって言われたら想像するそのままの味。僕がもう一つ選んだのはめちゃくちゃ酸っぱくて、癖が強くて、ファッション的にはいいんじゃないかと思ったんですけど、比べるとこっちの方がいいなと思ったので。

何が最適かを判断するプロの判断というのは、これまで積み重ねられてきた沢山の経験に裏打ちされているものですね。桝友さんはEsprit de Paris(エスプリ・ドゥ・パリ)のパティシエであり代表でもあり“食べられるのに信じられない”チョコレートブランド・BIZARRE CHOCOLATE(ビザールチョコレート)の活動もされています。ご自身と作品についてもお伺いします。

チョコレート界にはケーキショーみたいな細工を競うコンクールがあって、そこに参加して何度か賞を獲らせてもらいました。でも賞を獲った後にその技術を使わずに、みんなが普通のボンボンショコラを作ったりするのを意味わかんないと思っていたんです。ずっとそう思っていながら、コンテストには出ていて。せっかくの技術を商用化しない、売り物にしないのに、技術だけ高めて大会に出る時だけ発揮して、普段のチョコレート作りには何も使われないんですね。
それをどうやったら使えるかっていうのを考えて、最初に本物みたいなカブトムシを作って、クワガタも作りました。そしたらそれが売れて、テレビにも取り上げられました。麻子さんにも、ヘラクレスオオカブトをあげたら喜んでくれました。笑

面白いことをやりたいし、綺麗なものを作りたいし、本物みたいなものを作りたいし、人が喜ぶものを作りたいし…というのを全部集めると、クワガタとかカブトムシになった、みたいな感じです。特に昆虫類のチョコレートを作るには真空も含め全部の技術が入っています。
そもそも真空していなかったらチョコレートの表面が汚くなって、一度気泡が入っちゃうと戻れない作業なんです。真空できるなら、わざわざ精度の悪い方法を使う必要がないってなっちゃう、そんな次元だと僕は思ってますから。真空以外の技術でも、例えばカブトムシの形を作るのってシリコンの技術も必要だったりするんです。カブトムシなんて足は細いし、型がとれるわけない形をしているじゃないですか。でもとれる!っていうのを見つけたときは、たぶん日本にそんな人は他にいないので、テンション上がりますね。

【プロフィール】
桝友祐輔
多摩美術大学油画専攻を中退後、二代目として東京・吉祥寺のEsprit de Paris(エスプリ・ドゥ・パリ)を主宰。本物そっくりのチョコレート作品を制作するアーティストとして“食べられるのに信じられない”チョコレートブランド・BIZARRE CHOCOLATE(ビザールチョコレート)の活動も行い、メディアにも多数出演し注目を集めている。